自分の土俵で闘え!「続編」(5/5) ~「お願い」という交渉~
自分の土俵で闘え!「続編」(5/5) ~「お願い」という交渉~

自分の土俵で闘え!「続編」(5/5) ~「お願い」という交渉~

 この話、長くなりすぎたからそろそろ終わりにしたい。交渉とは、サラリーマンの闘いである。しかし、仕事において交渉を軽んじている人がとても多い。お客が有利だというのも幻想だ。最初からそう見せているだけだ。彼らは普段から自分が客だということを前面に押し出し、立場の違いをこちらに植え付ける。そうこちら側を洗脳しているにすぎない。しかし、これはれっきとしたお客側の交渉戦略であり、実際の交渉になった場合、すぐに自分らの土俵に「気」を引きずりこめるように周到な準備をしているのだ。だから、そういう状態も想定内にしておかねばならない。お客という立場で攻められると、すべての交渉が「お願い化」してしまう。そういう状態のお願いは、すでに相手の土俵でお願いしているわけであり、お願いを聞いてもらえるはずもない。お願いを聞くかわりに、もっと大きな宿題を背負わされたりする。相手の土俵でお願いするということは、ケツの毛まで抜かれてもおかしくないのだ。このような状況でのお願いを「単なるお願い」と呼び、交渉戦術である「お願い」と区別したい。

 アニキは最初、お願いも交渉戦略のひとつと言った。お願いは交渉にも使える高等戦術だ。要は使い方次第だ。上記のようにお客にただお願いする「単なるお願い」は、交渉でもなんでもない。玉砕覚悟の「お願いしたけどダメでした」という結果を最初から想定している話で、その時点ですでに「気」が抜かれているのだ。お願いはれっきとした戦術であるが、お客などに使う場合は必ず、自分の土俵で使わなければならない。マウントポジションを取った上で発動する攻撃である。こちらが有利な状態でしか使ってはいけない武器なのだ。

 そう、自分の土俵に持ち込めば、「お願い」という交渉術でお客をこちらの有利な方向に誘導できる。簡単に言えば、こちらの土俵でする「お願い」とは、「こちらの要求を呑まないとひどいことになるよ」という相手の弱みを突いた話を、単に下から目線で要求することにある。なんせ、相手はお客さんなんだから、遺恨が残らないように丁寧に圧力をかけるわけだ。だから、ここでの「お願い」とは、実際は脅迫である。上から目線の「脅迫」の話を、下から目線の「お願い」という形に変えて相手に伝えているにすぎない。「お願い」はそのようなシチュエーションにおいて最大の効果を発揮する。そういう状況で発動する「お願いという戦法」は、相手の気持ちも考慮したすばらしい作戦なのである。

 何度も言うが、この人間社会において単なる「お願い」は存在しない。すべては交渉である。単なるお願いでは、奥さんにお小遣いの値上げなんてできないだろ。