つかみの凄さがこの映画のよさだ。スキーなどやったことがない奴でさえ、行ってみたい気にさせる。当時のアニキは、哲学などとは無縁のミーハー野郎だったから、大学入学と同時にスキーを始めた。それは、バイブルであるホットドッグプレスやポパイなどでも、「スキーをしない奴は人にあらず」という勢いがあったからだ。そんなご時世だったからこそ、この映画も若者に崇められたのだった。
で、次にこの映画のよさだが、それはロッジだ。ロッジに泊まるというシーンは何度も登場する。当時、ロッジに泊まるというのは、スキーヤーの憧れであった。格安スキーツアーを利用していた極貧学生は、混み混みした不衛生なスキー宿に泊まっていた。トイレはくみ取り式で、風呂は男女が時間を決めて交代で入る。布団は湿っており、部屋はどこからか隙間風が入ってくる。メシは冷たい揚げ物と乾いた野沢菜だ。ご飯だけはおかわり自由がよかったが、たまに芯があったりした。しかたない、普段メシなど作らない学生バイトが作るからだ。とりあえずお腹を満腹にすると、部屋に戻って乾き物で宴会だ。そんなスキーしかしたことがないアニキ達にとって、ロッジという言葉は黄金の響きがあった。映画の中に出てくるセレブな雰囲気を味わうことができる貸し切りロッジに陶酔した。「こんな環境でギャルとスキーに行きたい」という一般ピープルの欲望が、すべてここに集約していた。安宿では得られないアフタースキーも理想形であった。この映画には、当時の若者の想いがすべて詰まっていた。
ストーリーは何の変哲もないアメリカン映画のような恋愛サクセス物だ。結果は最初からわかっている。じゃあ、この映画の何がいいのか?何と言っても、ヒロインの「原田知世」だ。この映画のよさは原田知世、これに尽きるといってもよい。この映画が好きな人は、まず間違いなく原田知世好きであると断言しよう。原田知世の魅力満載の映画だ。原田知世は地味なキャラクターなのだが、アニキの美人分類ではストライクゾーンのど真ん中だ。外角高めとか内角低め系のギリギリ美人ではない。当時、これほどのど真ん中美人はそういなかった。ぱっと見、かわいい系のアイドルは多い時代だったのだが、トータルバランスに優れた美人はいなかった。アニキの好みは小動物系で清楚な感じだ。性格も控え目がいい。最近は、男を引きずり回していじり倒す美人なんかが世にはびこるが、そんな色物系美人など言語道断である。映画の中での原田知世は、とにかく何をやってもかわいいのだ。愛くるしさ満載なのだ。この原田知世が愛くるしくてしかたないという感覚は、同性である女性にはわかるまい。という意味においては、女性はあまりこの映画を評価しないかもしれない。原田知世を愛でる感覚は、男だけが持ちうる。そして男だけがそれを楽しめる。で、月並みな話だが、原田知世が自分の彼女になったと錯覚させる。