サラリーマン輪廻(3/9) ~あめ玉餓鬼道~
サラリーマン輪廻(3/9) ~あめ玉餓鬼道~

サラリーマン輪廻(3/9) ~あめ玉餓鬼道~

 年齢は40歳を過ぎた頃だろう。自分に何の能力もないことがわかり、「このまま会社にいても…」と、資格取得や転職に考えが向かう。なぜなら、自分の将来を見るなら、目の前にいる先輩や上司を見ればよいのだから。自分の5年後は?と思ったら5年先輩を、10年後は?と思ったら10年先輩を見ればよい。彼らのその姿に一種の不安を覚え、「俺は違う、こうはならない」と考えなおすことになる。がしかし、会社もバカじゃない。そんなサラリーマンの心理などはお見通しだ。だから、駄々をこね始めたその年代に対し、あめ玉を用意しているのだ。そう、会社はそんな駄々っ子には、課長というポジションを与える。そして、「君には期待している」という魔法の言葉をかける。これは、サラリーマンにおいて、最上級の洗脳言葉である。これを言われると、サラリーマンは息を吹き返すしくみになっている。人は目の輝きを取り戻し、会社から離れたその心の軌道が修正される。また、この会社のためにがんばろうという気持ちになるから、まさに最上級のあめ玉だ。
 しかし、あめ玉もいつかは舐めてなくなるもの。舐め切ってしまったあめ玉の効果は約10年ほどだ。すると、ここで会社は次のあめ玉を用意するのだが、ここまで引っ張ると会社も鬼の顔を出してくる。つまり、天国と地獄に振り分ける。会社の役に立つ人間には「部長というあめ玉」を与えるが、役に立たないと評価した人間は突き放す。50歳を超えて突き放されても、どうしようもない。突き放したその裾にしがみつき、「どうかお側に!」ということになってしまう。つまり、会社の思うつぼだ。羊肉としてしか価値にない羊が、「まだ役に立つから生かしておいて」と懇願するようなものだ。
 これが、サラリーマン輪廻の流れのひとつである「あめ玉餓鬼道」だ。あめ玉につられ、地獄の餓鬼のごとく貪欲にあめ玉をしゃぶり続ける。あめ玉がなくなると、更なるあめ玉を求めて欲望をあらわにし、会社に居座り続ける。会社側のあめ玉に操られるそんな姿を形容して、アニキが命名した。
 あめ玉餓鬼道について補足しよう。大企業なら課長まで、中小企業なら部長までなら、こつこつと仕事してれば何とか出世できる。しかしそれは、会社が与えたエサ(あめ玉)にすぎない。餓鬼道の怖さここにある。これが会社の罠だと知らないがために、知らず知らずにあめ玉を舐めてしまう。要するにここまでの出世は、従業員を骨抜きにするための手段だ。会社から心が離れそうな年代に対し、会社に気持ちを引きつけておくエサが必要で、それがないと自分で他でエサを探し回るから始末が悪いのだ。エサを探す行動は、会社の罠に気付くことになる可能性が高いからだ。
 そして、日本の企業の罠の目的は、社員を骨抜きにすることだ。