アピーラー達の午後(2/14) ~その秀逸な技能~
アピーラー達の午後(2/14) ~その秀逸な技能~

アピーラー達の午後(2/14) ~その秀逸な技能~

 さて、サラリーマン社会におけるゲス野郎「アピーラー」とは、アピールすることがすべての輩達である。アニキは人の道に逸れた人種を輩(やから)と呼ぶ。美空ひばりの柔(やわら)ではない、輩(やから)である。最低な野郎達だが、会社勤めしている輩はまだ社会性はあるからそんなに敵視しなくてもいいのだが、自分に被害が及ぶなら話は別である。輩は実に迷惑な存在となる。

 そんな輩の日常の信念は、「手柄」を見つけることだ。トリュフを探す豚のようにアピールのネタを探している。何でもいい、自分の手柄と映るものすべてが、アピーラーのターゲットだ。タナボタの受注も、人事異動も、ラッキーな出来事もすべてアピーラーが自分のストーリーとしてしまう。ネタはボロでもかまわない。ひどい奴になれば、取引先人事も自分の根回しの成果だと主張し、すべて自分が陰で動いたからだと報告する。アニキのかっての上司も筋金入りのアピーラーだった。アピーラー選手権でもあれば、かなりよい順位を取れそうな最低な男だ。昔こんなことがあった。大きな問題が発覚し、上層幹部から解決の指示を受けたそのアピーラー上司は、「わかりました。私は陰で動きます。」と応えてあとは何もしなかった。アピーラーが板に付いたかなりのツワモノだ。その部下達が必死に問題を解決しようと動きまわり、最後には事なきを得たのだが、結果報告はその上司が幹部にするわけだから、いかようにも事実を曲げることができる。その報告の様子を他の部長から聞いたが、やはり、「自分が陰で動いた甲斐があった」と説明していたそうだ。な、かなりのアピーラーだろう。クソもいいとこだ。これが、祈祷やお百度参りでもして得た結果ならまだ許せるが、何もしないで結果だけ横取りする。部下が真剣に動いても結果が出なかった場合は、「もっと自分が動いていればこんな結果にはならなかった」と後悔の演出をして悔しがる。部下に任せた自分が悪いと、自分の上司である幹部にとことん詫びるのだ。その詫び方も迫真の演技であるため、幹部も許してしまう。頭を深く下げて詫びながら、その口元では舌を出しているわけである。幹部がアホなこともよく知っていて上手く利用する。そんな演技もまたアピーラーの技能である。

 これがアピーラーの生態であり、現在の目の曇った上層連中ではそれが真実かどうかを見抜けない。出た結果を「自分が仕組んだから」というストーリーに塗り替えて上司を納得させてしまう手腕がある。これだけでも相当なサラリーマンの武器となるのだが、アニキはこれをサラリーマンの武器とは絶対に認めない。