そして、最大技能である第四の技能、「演技力」を駆使する。演技力は欠かせないサラリーマン技能である。棚ぼた成果をさも苦労したように演出するために必要な技だ。大概の成果は棚ぼたが多いはず。それでのし上がった輩も多いはず。それが現実の大半だろう。運の良さももちろんあるが、それを我が事にする技能、それが演技力だ。君らの上司の大半はそれで上がった連中だ。演技力は、アニキ後日ブログ「サラリーマンの武器『演技力』」で詳しく話すが、アピーラーはまさにこの技能を使う。演技力だけでもサラリーマンの仕事が成り立つくらいの大技である。
アニキは過去の商社マン時代に、会社のリクルーターとして新人面接にかり出されたことがある。実際の現場で仕事している先輩社員に学生の質問に答えるという役目だった。人事部じゃ実際の営業現場の様子を語れないからだろう。学生を選ぶ就職面接では、学生も会社を選ぶという一面もあるからだ。そこで、学生が質問してきた。「商社マンにとって一番必要な技能は何ですか?」と。俺たちを値踏みするような質問だ。「ほれ、言ってみろ」といわんばかりの質問だ。こういう時の答えは、誠実さや、情報収集力などと言ってはいけない。しかも、「一番」と言っているから2つを答えてはいけない。これは、商社で働いている人間を値踏みしようとしている質問であり、社会人に対してケンカを売ってきた状態だ。なめられちゃいけないから、ここでの答えは即答で、しかも一言で言い切らなければならい。営業マンとしてのレベルを見ようとしているような質問だ。この質問では何が重要かと言うと、一言で言い切ることと即答だ。それ以外は何でもいい。相手の質問の本質は答えの内容を訊いているのではなく、アニキの答え方を見たいのだ。アニキ哲学ではいつも、「言葉は定義付けろ!一言で言い切れ!」だ。すべて、一言で定義付け、迫力を持って言い切る。間違っててもいい、一言で相手を言葉で刺すわけだ。この話も長くなるからやめておこう。ここで大事なのは、アニキのその答え方だ。だからアニキは「演技力だ!」と一言で言った。そして、その理由もすかさず言う。「いいか、一流の俳優はその演技力で感動させてお金を稼ぐが、商社マンは演技力で感動させたあとに注文をとらなければならない。迫真の演技で怒ったり泣いたりした後に注文を取らねばならない。だから、商社マンは俳優よりも厳しい仕事だ」と。学生はまさか演技力なんて言葉が出てくるとは思わなかっただろう。またそれを一言で言い切って、その理由も長々としゃべらずに一言だ。学生は一瞬、目を丸くしたが、すぐにお礼を言った。俺はさらに、「どうだ、商社マンになりたいか?」と訊いたら、「はい、すごく成りたいと思います」と、目が輝いていた。
アニキは何が言いたいかというと、要するに「演技力が大事」ってことだ。