アニキの組織論(2/5) ~合体ロボと百年の恋~
アニキの組織論(2/5) ~合体ロボと百年の恋~

アニキの組織論(2/5) ~合体ロボと百年の恋~

 創業者のこの小さな「傲り」、これが会社という生き物の体調を悪くさせると昨日話した。具体的な例を紹介しよう。
 この創業者の「傲り」が表面化すると、創業時の部下は離れてゆく。なぜなら、彼らがついてゆく心の柱は創業者の「人間性」と「理念」である。それ以外に、目に見えるものはない。つまり、目に見えない社長の人間性を信じてついてゆくことを決めていたのだ。だから彼らには、社長の「心のゆがみ」や「心の隙間」などすぐにわかってしまう。言葉の端々で前と違う部分に違和感を覚えるからだ。そこで、小さな成功で傲り高ぶる社長をいさめようとするわけだが、社長の目に映る景色はすでに変わっている。元々は腹心の部下としていた創業当初メンバーが自分を諫めるために、次第に煙たくなってくるのだ。そんな腹心の部下達に対して社長は、「自分の考えに反発する」という意識が芽生える。ここに、社長との心の隔絶が生まれてくる。逆に、社長から煙たがられているという印象は、本人にも感じ取ることができるから、益々心が離れていくことになる。社長は煙たい人間は邪魔なので、耳障りのいいことしか言わない部下を重用し、本心から会社のことを考えている人間を辞めさせようと考える。クビにするわけにはいかないから、重職からはずしたり、減俸したりで、自分から辞めていくように仕向ける。で、気がつけば周りにはボンクラ社員が固めており、業績にも影響を及ぼす。しかたなく社長はいろんな手を打つが、行き当たりばったりの対応策しか出せないために、借金が増えてゆく。こんな流れで、5年~10年でつぶれる会社はこのパターンが多い。そう、社長は自分の間違いに気づけなければならなかったのだ。
 アニキは何がいいたいかというと、会社は生き物だ。この生き物が健康な生き物として成り立っているのは、「企業理念」があるからだ。そしてそこに「社長の人間性」がプラスされる。これが会社という無機物に魂を入れて生き物化させる。この二つが従業員を結合させる接着剤だ。だから、これが欠けてるとたちまちバラバラに崩れる。で、この接着剤は市販の接着剤と違い、くっつけたらずっとくっついたままというわけではない。社長はそこがわかってないと、会社という合体ロボを動かすことはできない。
 実は、会社は社長のものではない。創業者、すなわちオーナー社長は、会社は自分のものだと思っている。無理もない、法律では会社は株主のものだからだ。法律はそれでいい。法律とは規範であってただのルールだ。アニキはいつも言うが、「人は言葉(ルール)では動かない、行動で動く」ものだ。つまり、この会社という生き物は、社長の人間性の下で、企業理念を柱に動くのだ。だから、「会社は自分が作ったから自分のもの」だという考えがちょっとでも従業員に見えると、従業員は離れていく。大概の社長もこれを知っているから表面的には出さないが、社長も人間だ、怒った時につい口に出してしまったりする。しかし、従業員は敏感だ。少しでもこのことを耳にすると、それは「社長の本音だな」ということなり、社長や会社に対する「百年の恋」も冷めてしまう。「失言は本音」だ。
 つまり、心の中だけの話であっても、この社長の考えはすでに病み始めているのだ。