そんな老練営業マンの特徴は、余裕だ。余裕があるというよりは、余裕を見せびらかしていると言った方がいいだろう。昼間は「仕事なんかしてないよ」というような雰囲気をわざと作っている。あくせく働く若造共よ、「俺みたいに余裕かましなよ」「俺の実績を超えてみな」とでも言いたげなその小憎らしい態度は、鼻につく。まあ、そう言うなって、ジジイは若者と張り合いたいんっだって。カワイイじゃないか、そんな態度は。そう思えば、腹も立たない。そんなジジイを毛嫌いするのではなく、せっかくだから、エッセンスを盗めばいい。ジジイも本音はそれを望んでいる。
要は、ジジイの本音は自分を慕ってほしいってことだ。若い連中と飲みに生きたいんだよ。ウンチクたれたいんだよ。ならば、あえて乗ってやってもいいんじゃないか。自分から乗ってやるということは、ジジイの余裕を上回っていることを意味するからだ。そこで、「俺の方がジジイより一回り大きい」とニンマリしていれば済むことだ。ジジイにわざと取り込まれてやればいいのさ。あとは棺桶しか待っていないジジイを慕ってゆけばノウハウを伝授してくれる。ただ、大げさに話すジジイが多いから、話を半分くらいに聞いておく術はマスターしておいた方がいいだろう。ただ、ジジイに対しては大げさに驚けよ。そこは演技しろ。ジジイをその気にさせれば、いろんなノウハウが出てくる。自慢話を聞く方が、説教を聞くよりよっぽどいい。ジジイを乗せれば自慢話、ジジイを乗せなければ説教だ。覚えておけよ。じゃあ、ジジイは何を教えてくれるというのか?果たして過去の遺産に学ぶべきものはあるのか?ここに若者の疑問がある。アニキは言う、「確かにある」と。
いいか、年寄りの話は過去のものと片付けてしまっては未来がない。人類は、過去の歴史を踏み台にして発展・進化してきた。過去をうまく使ってきたのだ。それは何を意味するのか。時間を買うということだ。M&Aと同じだ。M&Aって知ってるよな。企業の買収だよな、これの本質は何か知ってるか?企業を買収しているんだよな。その真意は買収した企業の価値を買ってるんじゃない、時間を買ってるんだぞ。わかるか?企業を買えば、イチからやらなくも済むからだ。先生などの専門家に学ぶことと同じだ。独学でやったってできるんだけど、時間がかかるよな。今世では足りないかもしれないよな、だから先生に教えてもらう。先生に払うお金は時間を買っているということだ。だから、M&Aも同じで、買収は時間を買うという意味だ。
話を戻そう。ジジイに教えを請うということは、無駄な時間を使わないで済むということだ。ジジイが過去に失敗した事例や成功例を教えてくれる。また、ジジイの哲学からも学べる。ノウハウを盗むよりよっぽどいい。自分でイチからやってもいい。それは可能だ。だが、失敗もある。先人がやらかした失敗事例は学んでおけば、それは対処できるではないか。それじゃ、経験不足になるってか。そんな、失敗なんか星の数ほどある。先人の失敗例を学んでおけば100%OKということには絶対ならない。必ず、経験したことのない敗にぶち当たるから、安心してくれ。それなら、少しでも先人の知恵を吸収しておいた方がいい。
ジジイだけじゃない、先輩同僚みんなに言えることだ。つまりだ、「我以外皆、我が師」ということにならないか。乞食からでも学べる。中国では、乞食は仙人が化けているというが、まあ、これは関係ない話だな。要は、何でも一日の長はあるもんだよ。