この企画はあまりにも失礼かもしれないと思い、1回で終わりにしようと考えていたが、意外と好評なので、第二弾を出すことにした。コーヒーブレイクだと思って読んでくれ。
アニキの前の会社の後輩にA君という人物がいた。彼はものすごく痩せていて、骨と皮だけに見える。顔は男前で歌もうまいのだが、女性に言わせれば貧弱だと言う。ケンカも弱そうだという。そんなことを言ってはダメだと、彼はただ痩せているわけではない。そういう体質なのである。そのカラダは天性のものだから、そのように身体的にけなしてはいけないと、注意する。ここは欠点ではなく、長所として褒める努力をしなければいけないということで、女性に話している。そうなのだ、彼は人類には珍しい「外骨格」なのだ。
外骨格と言えば、カブトムシやカニを想像してもらったらよい。骨が外側で、身が中だ。そう、A君は骨の中に筋肉があるから、全然問題はないのだ。カブトムシがそうであるように、実は力も強いのだ。歌がうまいのも、スピーカーのように体内に反響するからだ。だから、「外骨格はうらやましい。」と皆で褒め称えるのである。
同じくアニキの以前の会社の先輩に、Sさんという人物がいた。彼の癖は仕事中に鼻くそをほじることなのだが、仕事に集中すると必ず一心不乱にほじる。その様子を傍らで眺めていたのだが、あることに気がついた。その鼻くそをほじるその指が、第二関節まで鼻の中に入っているのだ。すごい深いところまで鼻くそをほじるものだと、感心したものだった。
アニキの先輩にMさんという人がいた。Mさんは1年先輩で、性格も穏やかないい人だった。ある日、アニキがトイレで用を足していると、隣にMさんがやってきた。横に並んだMさんが、以前よりも小さくなった気がして、「Mさん、あれっ、ちょっと小さくなったんじゃないですか、何かあったんですか?」と訊いた。元々小柄な人なのだが、「そうか、最近忙しくてストレスが溜まって、縮んだのかな?」と答えた。身体的なことを言ってはいけないと「はっ」と気づき、とっさに、「違いますよ、『肉体的』にじゃなくて、『人間的』にですよ。」と言って、そこからすごすごと立ち去った。人間として、決して肉体的な欠陥を言ってはいけないからだ。
これらの話は、一見「けなしてるのではないか?」と考えてしまうが、そうではない。褒めているのである。そう、真理はもっと深いところに存在する。