ちょうどアニキが学生の頃、夜中の娯楽と言えばラジオだった。親からテレビの時間を制限されていたから、早々に自分に部屋へ引き上げて、ラジオをひらすら聴いた。そして、その最高峰が「ミスDJリクエストパレード」だろう。番組の名前から連想できる、美人満載って匂いがプンプンする。その通りだ。
「ミスDJリクエストパレード」は文化放送の深夜ラジオ番組だ。ニッポン放送の「オールナイトニッポン」の対抗馬で、オールナイトニッポンより30分早く、0時半からスタートしていた。元々、アニキはオールナイトニッポン派で、午前1時から始まるのを楽しみに待つのだが、0時~1時の間の番組にあまりしっくりくるものがなかった。そんな時に、たまたま0時半からやっていたミスDJリクエストパレードを30分だけ聴こうとするのだが、ナマの女子大生のDJは心地よく、そのまま1時過ぎても聴き続けてしまうのだ。まさに女子大生の魔力である。
そうなのだ、ミスDJリクエストパレードとは、現役女子大生がDJを務めるという画期的な番組だ。オーディションで厳選された女子大生がDJを務めるのだが、その素人っぽさが非常によかった。まあ、番組の大半は曲であり、その合間にはリクエストハガキを読むという内容であったため、そんなに特殊な能力は要らなかったのだろう。
この番組の力もあり、時代は「女子大生」というブランド時代に突入していた。当時は「女子大生」というだけで、神にも近い響きがあったのだ。世の中の順位は、「神⇒女子大生⇒一般ピープル」という形であった。原宿や渋谷などでは、女子大生が道の中央を歩き、一般人は端を歩いていた。あまりにも女子大生が輝いていて、一般の貧相な男では、目がつぶれてしまう。アニキは、遠くに女子大生らしき集団がいると、よく匂いをかぎに近づいたものだ。時代は女子高生には全く価値はなく、女子大生が時代の王道であった。
アニキはその頃は浪人生であったため、「大学=女子大生の群れ」と理解して、何としても大学へ入るのだ!と息巻いていた。
そんな時代を象徴する番組がミスDJリクエストパレードであった。夜中の0:30~3:00であっため、受験勉強を理由に深夜まで起きていた。最初、月~金まで毎日聴いていたのだが、さすが毎日だと辛すぎて、予備校で居眠りしてしまうという事態となり、「これは、習慣を変えねば女子大生の群れに出会えなくなるぞ。」と、聴く日を削ることにした。
果たして大学生になった暁には、現物のケツを追っかける日々となり、ラジオを聴かなくなってしまった。やはり現物にはかなわない。そして時代は女子高生ブームとなり、おニャン子クラブが台頭してくるのであった。