アニキは数年前にカミさんのせかされて家を建てたのだが、やはりハートカクテルの要素を取り入れている。かなりの部分においては、かみさんに却下されてしまったが、唯一ここだけはということで許してもらったのがベランダだ。ウッドデッキのベランダで、そこで夜、カクテルを飲まなければならない。このスタイルだけはどうしても譲れずに、他はすべてかみさんの意見に従い、ベランダだけにこだわりを持った。
ハートカクテルに出てくる音楽も勉強した。当時の仲間うちでは誰も聴かないようなジャズ系の音楽が紹介されていたから、無理矢理勉強しなければならなかった。コニーフランシスやエディハリスといった一般的ではないアーティストだ。マンガに出てくる音楽をメモして、CDレンタル屋で借りてダビングする。そして何度も聴いて自分のものとする。その甲斐があって、今ではジャズ通となってしまい、一般ピープルよりは少し知識がある。お陰で、仕事でもジャズ好きのお客さんとの会話で話がはずむ。これはハートカクテルのひとつのメリットといえた。
ファッションも参考になった。主人公のファッションスタイルはアメカジやアイビーだ。これは、アニキの趣味と同じだった。紺ブレ、ボタンダウン、チノパン、ローファーなどのこだわり具合はよかった。アニキのワードローブと同じであったことがうれしかった。白いヘインズのTシャツにリーバイスのジーンズも出てくる。ベタな感じだが、これも好きだった。
で、ストーリーは男女の恋物語だから、ホッドッグプレス並みに活用した。ホットドッグプレスと異なるのは、店は架空の場所だから、同じような雰囲気の店を探さなければならなかった。これが結構よかった。自分で店を探すから、同じような人種とかぶらないで済んだ。自分だけのスポットというものを持てるようになったのだ。
話せば切りがないからこの辺でやめておくが、アニキのこのハートカクテルのように、自分のスタイルの原点となるものが、人には必ず存在する。これをおろそかにすると、理念がなく筋が通ってない大人に見られてしまう。だから、人に受け入れられなくても、堂々と自分の感性の原点は自慢すればよい。
アニキにとっては、そんな想い出のハートカクテルである。今見ても古さは感じられない。元々レトロな感じのスタイルだからだ。今更、学ぶところはないが、自分のスタイルの原点に帰る意味では大いに参考となる。それと、ハートカクテルにはまっていた頃を思い出し、懐かしさがこみ上げてくる。まあ、これもアニキ哲学で言えば必然だ。ハートカクテルにはまったのも、人生に必要なことだったのだ。確かに、ハートカクテルにおいては、そう言われても納得できる部分は多い。
若者よ、恋愛なんていうものは、時代を超えてもその感性は同じはず。太古の男女も現在の男女も、人を好きになるその感性はなにも変わってないのだ。感性を磨かなければ、ゲットした女性に振られるだけである。ならば、感性を磨くのは当たり前だ。振られながら、実践で感性を学んでいってもよい。それがいやだから、人は映画や本、又は人の経験談から学び、感性を磨いてゆくものだ。その感性を磨く意味でも、ぜひハートカクテルを見る価値はある。磨くべき感性にはいろいろあるが、ここで磨かれる感性とは、これだ。
「女性は何を求めるのか?」という疑問だ。ハートカクテルはこの感性に答えてくれるだろう。アニキは言う、男にとってこれが最大の疑問であり、一生かけて探求するのにこれだけふさわしい命題はないと。その答えが、おぼろげながらにハートカクテルにちりばめられている。まさに宝の山だ。同じことをしろと言っているのではない。考え方を学べということだ。贈り物に対する考え方とか、待ち合わせの心得とか、相手との距離感とかとかだな。TPOを意識して見ればよく理解できる。その後、いろいろなメディアを見たが、これほどの教科書は出てきてない。
機会を得たなら、ぜひ見てほしいと願う。