実は、なにを隠そうこれがアニキの生活スタイルの原点だ。アニキのスタイルの源は、以前もブログで紹介した「ホットドックプレス」で生き恥をさらし、その反省を行ったあと、「POPEYE」でアイビーとアメカジにどっぷりとはまり、そしてこの「ハートカクテル」で生活スタイルをがっちりと作った。いまだにアメカジスタイルとハートカクテルの世界観の生活は健在だ。
「ハートカクテル」とは、わたせせいぞうのマンガだ。ショートストーリーの寄せ集めなのだが、ちょうどアニキが大学生の頃に全盛期だった。絵がきれいなのと、マンガのコンセプトが好きだった。さらにマンガだけでなく、テレビアニメにもなった。どこの局かは忘れたが、真夜中に、「たばこ1本のストーリー」ということで放映していた。アニキはアニメの方がマンガよりも好きだった。流れる曲がサイコーだった。アニキはその頃からフュージョン系のインストゥルメンタルにはまってて、松岡直也やカシオペア、高中正義をよく聴いていた。だから、ハートカクテルに流れる曲が松岡直也だったので、申し分なかった。曲とストーリーがよくマッチしており、なんとも言えないほのぼのとした世界観を生み出していた。
この世界観は、当時、皆好きなのかと思っていたが、意外に評判が分かれていた。アンチ派の友人に話を聞くと、男女の別れを美化しすぎてる部分があり、且つ別れた後にまた再開するシチュエーションが多く、現実的ではないという意見だ。だが、アニキはそんなことよりも、いろんなパターンの恋愛を取りあげていて、大人だなあと感心して見ていた。生活スタイル・ファッション・置いてある小物や調度品など、どれも参考となった。生活スタイルに、親と同居なんか出てこない。すべて一人暮らしが基本となってるから、アニキも一人暮らしに憧れた。しかし、社会人になった途端、いきなり会社の寮へ入れられたものだから、おしゃれな暮らしもクソもない。プライベートもへったくれもない。毎日、先輩の襲来におびえる日々だった。とにかくまずは寮をを出なければということで、金を貯めてから一人暮らしを始めた。
このハートカクテルの生活感は、まさにアメリカ的だ。アメリカンなグッズが部屋には置かれ、飲み物は外国のビールやウイスキーだ。国産のビールや日本酒なんかは出てこない。バーはよく出てくるのだが、居酒屋は出てこない。絵にならないというのもあったのだろうが、外国風な暮らしの雰囲気もかっこよさのひとつだった。だからアニキも外国のビールを好んで飲んだ。ハートカクテルのマンガ本では、外国の缶ビールの空き缶を窓辺に積み上げてるシーンがあった。アニキも真似したのだが、缶の中にゴキブリが入っているのを発見して以来やめた。また、バドワイザーの鏡が飾ってあるシーンを見て、アニキもそれを見つけて手に入れたのだが、鏡にでかでかとバドワイザーと書かれてあるため、鏡が見にくく使いにくかった。さらに、近所で外人か二世のマスターがやってるバーを探さなくてはと、近所を歩き回ったが、変人マスターのバーしか見つからず、しかたないからそこに出入りすることにした。しかし、さすがマスターが変人だけあって、客も変人が多く集まってくる。せっかく行きつけにしたのだが、泣く泣くそこに行くのをやめてしまった。車も同じで、ビートルがよく登場するのでアニキも憧れた。ぜひ手に入れたいなと思っていたら、たまたまビートルを持ってる先輩がいたので、それに乗せてもらったことがある。うるさいし遅いしひどい車だった。マンガでは涼しげに音楽を聴いているのだが、実際の車内では音楽なんて聴けたものではなかった。
マンガの世界と現実がなかなかイコールにならないものだなと、いろいろ悟った時期でもあった。