「オーナー社長」という生き物の生態(9/11) ~「完全変態」を目指せ~
「オーナー社長」という生き物の生態(9/11) ~「完全変態」を目指せ~

「オーナー社長」という生き物の生態(9/11) ~「完全変態」を目指せ~

 では、オーナー企業とはどうあるべきか。その正しいあり方をアニキ哲学の観点から見てみよう。企業は生き物だ。特にオーナー企業はオーナーが直接指揮を執れる状態である理想の形態だ。オーナーの意思がそのまま直接会社全体に行き渡るからだ。であるならば、オーナーはふんぞり返っている場合ではない。利己的な考えや慢心が少しでもあると、会社は動いてゆかない。会社の信念・理念を明確化して、社長自身も行動哲学をきちんと持ち、それを行動で周りに見せる。社長は人間的にも正直者であり、公明正大な心を持って、周りから尊敬されなければいけない。そこで初めて会社に魂が吹き込まれる。社長は私腹を肥やしてしいる場合じゃない。我が身より、従業員のことを第一に考えるスタンスを持つべきだ。もしそれが嫌だというのなら、自分は国王のように完全に会社運営から身を引いて、誰かを社長(首相)として立てなければならない。大概、番頭さんと呼ばれるサラリーマンの親玉が首相の役目を演じる。国王であるオーナーは最終実績の報告だけを聞き、その業績に対して番頭に意見する程度でいい。表にはしゃしゃり出てこないのが筋だ。上手く回っているオーナー企業はこれができている。オーナーは出社してこないから、これならどこで何やっていてもいい。平日ゴルフ行ってもいい、愛人宅に入り浸っても、従業員の眼に届かないから、会社はうまくいく。

 ここまで、創業オーナー社長をこき下ろしてきたが、アニキが言うような会社ばかりじゃない。うまくいっているオーナー企業も当然ある。それは、なぜか?それは、ある時期に、オーナーが「完全変態」を遂げたからだ。「完全変態」とは、露出魔とかの変態のことじゃない。虫なんかで、幼虫から成虫になることだ。例えばアオムシが蝶になることが、完全変態だ。学校で習ったよな。完全変態で蝶になった時、アオムシの記憶はないという。詳しいことはわからないが、昔、本で読んだ時には、さなぎの中で脳も一旦分解されて作り直されるから、アオムシの頃の記憶もなくなるのだと言う。要するに、オーナー社長も考え方を180度変えることが必要だと言うことだ。オーナーは生き物のなかで、むしろ虫に限りなく近いのだ。

 最初、どの会社も数人からの従業員でスタートしている。どんな会社も、起業した直後からしばらくは、会社の黎明期だ。そのときは、社長のかけ声ひとつで、社長の思い通りに会社の舵を取れる。そして、会社が軌道に乗り始め、規模は段々と大きくなる。従業員も増えてくる。100人を超える従業員を抱えるようになる。すると、段々と社長の言う通りには会社が動かなくなってくる。いくら社長が檄を飛ばしたところで、末端には社長の意志が伝わらない。そんな状態で、さらに従業員は200人、300人と増えてくる。益々従業員が思うように動かなくなり得、社内にも問題が噴出してくる。で、社長は多くの社内の問題に悩むことになり、社長室へとこもる。