じゃあ、この行動軸だけですべて網羅できるかというとそうじゃない。だからアニキには他の信念もある。「何もしないと何も変わらない」という信念もその一つだ。「後で後悔するのが嫌だから、そのことに最大の努力をする」という信念もある。他にも「人が嫌がることはしない」というものもある。アニキの理念もいくつもある。自分が関わる社会はひとつでない。立場により多くの役割を持つ。人はいろんな顔を持っているのだ。プライベートでは、父親であり、夫であり、兄貴であり、息子であり、友人であり、愛人などである。仕事関係では、上司であり、先輩であり、後輩であり、営業マンである。関わる社会によりその役割が存在し、それをこなさなくてはならない。そこにひとつの理念だけでは物足りないのだ。役割をこなす上での行動基準がそれぞれ必要となる。
ここで気づいてもらえたと思うが、役割とは常に両方をこなしている。例えば、自分が子ども父親であると同時に、年老いた父親の息子でもある。ここに実は人生の秘密のひとつが存在する。アニキ哲学の「二面性論」を思い出してくれ。相反する両方の役割をこなすことで、「相手の立場が理解できる」ということだ。どういうことかと言えば、理念・行動軸を決める上で必要なことを実際に学ことができるということ。そして、本当にその理念が納得できるかどうかを検証できるのだ。だからよく、父親の気持ちは父親にならないとわからないと言われる。人間は物事を頭の中で考えていても、実際にその立場にならないと理解できない生き物だ。考えと実際は全く違うのだ。なぜなら、相手はロボットではなく、自分で考えて行動する生き物だからだ。
行動軸が決まれば、あとは実行するのみだ。淡々とそれを突き詰めてゆく、と言っても大したことではない。日常、様々な問題が自分に降りかかってくる。それらを自分の決めた信念・理念に基づき裁いてゆけばよい。大したことなのは、決めた信念を貫くことだ。言葉ではかっこいい事を言っても、結局は尻込みしてやらないということは避けなければならない。例えば、「弱い者を助ける」という信念を持っていた場合、たまたま弱い者いじめしている現場に自分が居合わせたとしよう。自分より弱そうな相手に対してはこの信念を貫けるが、自分より強そうな相手には適用しないなんてのは、ダメ人間のレッテルを貼られる。ここが信念の困難なところだ。だから、信念初心者は「簡単なこと」を信念にすることを奨める。例えば、「困ってる人を見捨てない」とかのレベルからはじめてみることだ。これならできそうな気がするだろう。どんな小さな信念でもいい。信念の難しさは、信念を持つことではなく、信念を実行し続けることだ。かっこよくなりたいなら、がんばって貫けということだ。面白いことに、信念を貫きはじめると、顔つきが変わる。男の顔になる。「ぼくちん」のお顔からはおさらばだ。そして、発言も変わってくる。なぜなら、周りの一般ピープルが段々情けない存在に映ってくるからで、これは1ランク上の人間になるからだ。そうなると、大抵のことには腹が立たなくなる。これは、人間の本来の人生の軌道に乗ったことを示す。
そして、一つの信念を貫くことが習慣となると、徐々に困難な信念に自然とシフトしてゆく。そんな流れになるはずだ。